いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。
「ねぇ……っ、瑠希……?」
『どうしたんだよ、心咲。今日も学校休んでただろ?熱でもあるのか?風邪引いたのか?』
瑠希が心配してくれるのはいつものことなのに、今日はその言葉がやけに優しく聞こえて、それがまた余計に私の涙を誘う。
………ただの熱や風邪なら、よかったのにね。
笑って“大丈夫だよ”って言えるくらいのものだったら、どれだけよかっただろう。
でもね、瑠希。
私ね、ただの熱なんかじゃないんだよ。
はっきりとした原因も分からないまま“記憶が消えちゃう病気”なんだよ。
「助け、て……」
震える声が、部屋の中に虚しく響いた。
『は?』
「私ね、病気なんだって……。どんどん人の名前や顔を、忘れていっちゃうの」
『心咲、なに言ってんの?嘘だろ?』
「ううん、嘘じゃないよ。原因不明の記憶障害。今日、病院に行ってそう言われた」
私の突然の告白に、瑠希が息を呑んだのが分かった。