風旅記
第一話
酒盛り

マスターにお会計を頼み、外に出る。
もう一月を過ぎた頃なのに、寒い。

 寒いですね。

 そんなもんだ。北国なんてのは。

隣にいた猫がうっとおしそうに返事をかえす。少し眠そうだ。

 眠いですか?

 眠い。とても眠い。抱っこしろ。
 
 何で?

 寝るからにきまってんたろちび。

確かに十五歳男子にしては小さい。
でも猫に言われるとなんか不思議。
チビにチビって言われんのは心外だよね。

 何考えてやがる

 何も?どうしてですか?

 どうせちびとか考えてたんだろ。餓鬼が

 すいません。猫さん

 どうにも好かんな。お前。

 そりゃどうも。

猫は、褒めてねぇし。と言って、ぷいっと反対側を向いてしまった。
やれやれ、困った猫さんだこと。
マグロあげだら機嫌なおしてくれるかな。
その前にフェリーチケットを買わなきゃいけないんだけど、付いて来てくれるかな?

 あ、あぁ。何だあれは

 猫さん、何見てるんですか?

 あれだ、見えないのか

 何もないです。何が見えます?

 殺し屋だ。

あぁもう。またそんなんか。
最近そんなんばかりじゃないか。全く。
平穏に旅したいんだけど。のんびり…
無理だな。猫さんと旅してる時点でもう不可能。散々悪態付かれて落ち込んで、
もう別れようって思ったら、
さり気なく甘えて来てさ、可愛くて可愛くて別れることが出来なくなるんだよ。
畜生。ズルいぞ猫さん!

 あ、待って猫さん!

 トロいぞのろま。早く来いよ。

 も、もうちょっとペースを落として

僕は、ちょっと危ない所に足を踏み込んでしまいました。猫さんと共に。
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