風旅記
思い出

宿に戻って、第一声は のあああぁ!?
だった。散乱している僕の服とノート。
猫さんのお風呂グッツ。カメラ。玩具。
正常な状態ではなかった。

 おい、こんな散らかして出たか?

 んなわけないじゃないですか!

 だよなぁ

 盗られたものは無いですか?

一つ一つ確認していく。
何も盗られていないようだ。おかしいな。
何をしにココに入ったんだろ?

 あぁ…ない

 猫さん?

 蝶タイが、ない!
 一番気に入ってたやつがない!!

僕は頭を抱えた。
まずい、大事件だ。
猫さんが外出してくれなくなるぞ。
猫さんはと言うと、目を見開いて立ち尽くしていた。なんとまあ、珍しいこと。

 おい、少年。
 
 なんでしょ?

 靴跡がまだある。紙に取れ。
 犯人は恐らく二十代くらいの男性だ。
 ちんたらしてんな、早くやれ!

 機嫌悪くしないでくださいよ!
 てかあたらないで!引っ掻かないで!
 だからやめてって!

 うるせえぞクソガキ!
 さっさとしろゴラァ!

なんて暴力的!この猫、

 女の子なんだからもう少しお淑やかに!

ピタッと動きが止まる。
もうこれ以上開かないであろう目をぱちくりさせながら、 う とか あ とか言っている。何?どうしちゃったの?

 あの、猫さ
 
 何故知ってる

 え?何が?

 とぼけんじゃねえよ。
 どうしてお前が性別を知ってる?

 どうしてって、ずっと一緒だったから…
 …あれ?ずっと一緒だった?
 確か二年前に猫さん拾って…
 二年前に?何してたっけ?

 おい、大丈夫かお前。

二年前より前の出来事が思いだせない。
猫さん拾ってそれからしか思いだせない。
何で拾ったのか、どこにいたのか、
いつから旅をしていたか。
何も思い出せない事に気がついた。

 おい、おい!しっかりしろよ

 ✗さん、僕、思い出せないです

 は?

 え?だから……あっ?…誰?

 何言ってんだお前は

 誰だよ!誰だよお前!✗さんは?!

 落ち着け!何だァ、一体どうした!?

僕は叫んだあと、目の前の女性の悲鳴を聞いた後、目の前が真っ暗になった。



 
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