月下美人が堕ちた朝
その跡から、滴のように血液が膨れたかと思うと、涙のように流れてシーツを汚した。
あたしは先程見た悪夢を思い出し、とてつもない吐気に襲われる。
胃が痙攣しているのかと思うぐらいなのに、胃液すら出ない。
あたしはそれでもベッドから降りて、ドアの近くに置いてあったバッグを持って病室を出ようとした。
足が麻痺してるみたいにグネグネ曲がり、自分のものじゃないみたいだ。
一旦ドアに寄りかかり、荒い呼吸を整える。
負けるわけにはいかないのだ。
自分だけには。
あたしは頭に巻いてある包帯を外し、思いきりドアを開けた。
不気味な程静まり返る廊下に、サンダルの足音が響く。
病室を左に曲がるとすぐにナースステーションがあり、疲れきった三十路半の看護師が呼び止める。
「あら?
さっき運ばれてきた女の子じゃない?
どうしたの?」
誤算だった。