月下美人が堕ちた朝

強打した頭では、こんな単純なことすら計算できなかったのだ。

あたしは聞こえない振りをして、立ち止まらずにそこを通過しようとした。

「ちょっと?
えーっと…
カイドウさん?
どうしたの?
安静にしてなきゃダメよ」

あたしは背中から聞こえる声の主に振り返って言った。

「お願い、邪魔しないで」
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