明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。
芽衣がこの町にきたのはほんの数か月前。
松下先輩と親しいかと言われれば正直わからない。
芽衣が松下先輩に片思いをしていて、それを知った明香が、芽衣を責めていても「明香ならしそうなこと」で片付けることができる。
普通ならそんなことで相手をいじめるなど、問題だと思う。
自分の友人や私に兄弟はいないが、兄弟がそんなことをしていたら止めると思う。
だが、彼女の親も友人もそういうタイプではない。
かわいがられたとえいば聞こえはいいが、彼女はかなり甘やかされて育ってきたようだ。
明香は芽衣の携帯を操作すると、にっとばかにしたような笑いを浮かべる。
「あんたこれだけしか友達いないの? 入っている番号は両親と後二人だけなんだ。悲しいね」
明香は口元に手を当て、くすくすと笑う。
だが、突然、驚いたように小さな声を漏らす。
「ごめんね。性格悪いから、友達出来ないんだよね」
明香の言葉に芽衣は反応を示さなかった。何を言っても無駄だと悟っているのだろうか。
性格の良し悪しはある意味悪口の常とう手段だと思う。
明確な基準なんてなく、人の主観で言えるのだから。
明香は芽衣に携帯電話を差し出す。
芽衣が手を伸ばそうとすると、明香はその電話を渡すのを止める。
今度は自分の携帯を取り出した。
そして彼女は満面の笑みを浮かべると、何かを芽衣の携帯電話に入力しているようだった。