甘やかな螺旋のゆりかご
なのに……なぜ……
僕たちが求めて、形成してきた幸せを壊すようなことを、僕は考えてしまったのだろう。幸せの象徴の全てだと言っても過言ではない妹の恋心が、なぜ僕に向いているかもなどと……。
白雪姫な妹は、欲目抜きで可憐でもあり綺麗だ。昔から近所でも評判があって、不幸な幼き日を通ってきてもそれが変わらなかったのは本当に良かったと思う。性格も温和で気配りが程よく、そして僕が一番よく知る気の強さも、あってくれて安心する。
妹に対して、きっともっと、感じることや思うことはあるのだろうが、ありすぎて、もう愛おしいに尽きてしまう。
妹を想う感情。それは昔から桁外れにあって。
けど、それはそんな感情ではなかった。その分別くらいはつけられたし、そこまで狂ってはいなかった。
妹が自暴自棄になったふたりきりの夜、あまり覚えていないが倒れてしまったのは、そこらへんが原因なのかもしれない。
僕は、妹の自暴自棄を真に受け、そして、耐えられなくなったのかもしれない。
僕たちが求めた幸せを、僕たちが破壊する……それは、弱い自分には耐えられることじゃなかった。例えそれが、想像の未来だったとしても。僕が妹を、受け入れる気がなかったとしても。
当然のことだ。僕たちは兄妹なのだし。道理がない。
……なのに……なぜ……
僕は、あのふたりきりの夜、妹を抱き締めてしまったのだろう。
リンクを、させてしまったのだろう。
今、ひとり部屋の中で、ガトーショコラの味を反芻し、妹が指先で触れていった唇が熱いのだろう。頭が、妹で侵されているのだろう。
よくない感情まで沸いてしまいそうになる。もしかして、もう僕はそうなのではと、僕のどこかが囁いてくる。
……ああ。なんてことを考えてしまうのか。
途端、 背筋を蛇が這い、細い舌で舐めていくような悪寒が走り、 座り込むことさえも困難となりその場で床に倒れ込む。自分のおかしな息遣いが、やけに響いて耳に入ってきた。
ああ……この感覚は一度だけ、覚えがある。
大丈夫だ大丈夫だと言い聞かせ、奇跡的に僅かな苦しみで終っていく様相を呈する今日のそれは、あのふたりきりの夜と同じものだと思い出した。