過去恋に今の鼓動を重ねたら
あれ?…そういえば、最近泊まっていない。いろいろと用事があって、忙しそうにしていた。あれは、誰との用事だった?

今更ながら、聞いてこなかったことが悔やまれる。だから、今回聞いた私が珍しいと言われる始末だ。


「洗うよ」


食べ終えた食器を洗おうとキッチンシンクに運んでいると、雅也さんが隣に来て、スポンジを持って泡立てる。「よく出来た恋人」である雅也さんだけど、今日は素直に受け取れない。

やましい気持ちがあるから、率先して動いているのではないかと勘繰ってしまう。洗う雅也さんの隣に立って、フキンを手に取り、そっと顔を見た。いつもと変わらない表情だし、動揺している感じもない。


「雅也さん。洗い終わったら帰るの?」


「ん?まだ1時間くらいはいるよ」


「1時間…」


時間を決められてしまったことが、物悲しくなる。時間を気にすることなく朝まで一緒に過ごせない。

雅也さんは、一体どこに帰るの?
< 183 / 246 >

この作品をシェア

pagetop