過去恋に今の鼓動を重ねたら
「俺のこと、嫌い?」


「ううん」


嫌いではない。


「俺のこと、怖い?」


「ううん」


怖くない。


「俺のこと、好き?」


好き?好きと言えば好きだけど、この好きは言えない。だって、私には雅也さんがいるから。

必死に脳内で自分に言い聞かせる。雅也さんがいるから、ダメ。

キスをしたら裏切りになる。

雅也さんに言えないことをしてはダメ。


でも、メールでやり取りしていることも今日食事に行くことも言っていない。それにここに来たことも絶対言えない。同じ言えないことだ。

そう考えるとキスをすることも同じことで、しても構わないことなのではないかと思ってしまう。


違う!キスは別物だ!


私は首を大きく振った。


「そうか。好きじゃないよね。昔好きだったというからつい今もと思ったけど」


「え?」


私が首を振ったことに「好きじゃない」と思ったようだ。
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