艶麗な夜華
「ありがとう恭也」



ほほ笑む彼女の膝に、


薄いピンク色のブランケットを掛ける恭也。



「車おいてくるけど、寒いから先に病室に行ってる?」



「うん、そうする」



恭也の車が走り出し、


車イスの彼女がこちらに向かってくる。



自動ドアが開き、廊下に冷たい風が一気に入り込んだと同時に髪の毛を押さえる彼女の膝からするりと落ちたブランケット。


それを拾おうと彼女の方へ向かって歩き出した瞬間───


えっ…


「あっ…」


彼女は小さな声を漏らし地面に足をつくと腰を浮かせ、

それを拾い上げた。


まったく歩けない彼女がそれを拾う事は……本来できない筈。


でも……


たしかに今、彼女は……。



パニックをおこす頭の中。


脇を通り過ぎる彼女。

< 374 / 700 >

この作品をシェア

pagetop