エリート室長の甘い素顔
「もしかして……告白しました?」

「はい?」

 顔を合わせた途端、安藤がそう切り出してきて悠里を驚かせた。

 彼はふふっと愉しげに笑う。

「ごめんなさい、申し訳ないって顔してます」

「え……」

「悠里さんのその分かりやすいところ、本当にかわいらしくて気に入ってるんですけどね」


 悠里は戸惑いながら、安藤をじっと見つめた。

 彼は、少しだけ寂しそうな笑みに変わって言う。

「今日行こうと思ってた場所にだけ、最後に付き合ってもらえませんか? ……もちろん友人として」


 悠里は目を軽く見開いて瞬きをした。

(最後……)

 彼のお願いに、悠里は応えてうなずく。

「わかりました。でも、どこへ?」

 尋ねると、安藤は嬉しそうに微笑んだ。


「実はかなり好きなんですけど、一人じゃなかなか行けないんですよね」

   ***

 電車で連れてこられたのは、意外なことに水族館だった。

 近年できたばかりのランドマークタワーの足元にあり、水族館にしてはコンパクトな広さの屋内施設だ。


 安藤が二人分の入場料をさっさと払い、慌てて払おうとした悠里の手を止めて嬉しそうに笑った。

「ここの支払いはいいです。僕の趣味に付き合ってもらうので」


(趣味……?)

 もしや安藤は釣りが好きだったり、魚博士だったりするのだろうか――?

 安藤が珍しくウキウキしているのがその背中から伝わってきて、悠里はその意外性に目を見開いた。

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