チューリップの花束に愛を込めて
チューリップの花束に愛を込めて





『亜季ー早く起きてこないと遅刻するわよー』


お母さんの声が階下から響いて、あたしは眠たい目をこする。


あれ…

もう朝…?


しばらくして、お母さんが階段を上ってくる音が聞こえて、最後の階段を上った、そう思った次の瞬間、お母さんがドアを開けて、顔を出す。



『亜季、いつまで寝てるの?
 ほら、あんたに届け物!』


お母さんはそれだけ言うと、手に持っていた花束をベッドに投げた。


あたしはゆっくりと体を起こし、投げられた花束を見つめる。





『……白のチューリップ…?』


段々と視界がハッキリしてきて、目の前にあるのが白いのチューリップの花束だと知る。





『…お母さん、これ、あたしに?
 誰から預かったの?』


お母さんに問いかけておきながら、毎年、あたしの誕生日に黄色の花束を贈ってくれる健太の顔が思い浮かぶ。



『さぁ?
 だって玄関のところに置いてあったんだもん。
 でも、メッセージカードがついてるじゃない』


確かに花束の持ち手のところに、小さなチューリップの形をした紙が貼られている。




『…失恋…?』


その紙には、“失恋”という二文字が書かれている。


その文字は見覚えのありすぎる字で、でも、なんで…?




『確かに、白いのチューリップの花言葉は、“失恋”よね』


お母さんがそう言って、あたしのベッドに腰掛けてくる。




健太、これ、どういう意味?


黄色のチューリップの花言葉でも知って、それであたしが健太のことを好きだって、そうバレたってこと?


それで、丁寧にも、白いのチューリップを贈って、あたしへの返事のつもり…?


わざわざこんなことしなくても、健太に好きな女の子がいるって言われた時から、ずっと健太の返事くらい分かってるってのに。



あたしは、健太がくれた白いチューリップの花束を見つめる。






『亜季、知ってた?
 白いチューリップって、“失恋”ってだけじゃないのよ?』



『…え…?』



『失恋して、想いをきれいさっぱり流して、新しい恋をする、そういう意味もあるんだよ?』



『“新しい恋”…?』



『そ、“新しい恋”。
 もしかしたら、これを贈ってくれた子は新しい恋を探してるのかな…なんてね』


お母さんはそう言って微笑む。



そんな訳が無い。



だって、健太の幸せには由奈ちゃんが必要で。

由奈ちゃんとはきっと仲直りして。




あの日から一ヶ月が過ぎたけど、二人が別れたなんて噂、あたし聞いてないもん…



そんな健太が新しい恋を探すとか…ありえないよ。




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