蕾の妖精たち
「一方、相川幸乃は、あの事件以来、世間に身を晒され、辱めを受けた女として生きて来た。これには僕に責任がある。僕が軽率だったからだ。そこまで考えが及ばず、警察に通報し、事件にしてしまった」

「だからって、孝之が逆恨みされるのはおかしいわ」

「そうですね。最初はね、僕だってそう思いました。しかし、彼女の人生の重みを解ってあげられなかった自分が、今は悔しくて堪らないのです」

「……」

「それに、よくよく考えてみたのですが、逆恨みなんかではありません」

「では、何よ」

「すみません」

「……言えないの?」

 舞子は想像したが、口にしたくはなかった。

「舞子さん、この事は黙っておいて下さいますか。僕自身で、決着すべき問題なのですから。もう時刻も遅い。お帰り下さい」

「待って。貴方は教師をクビにはならないわ。暫く謹慎して、職場復帰するの。お願いだから、私にもそれぐらいの事はさせて」

「舞子さん。ありがとう。今週末に林間学校がありますよね? 僕の生徒達を、宜しくお願いします」

 翠川は舞子に頭を下げた。


 こんなんじゃない、と舞子は自問した。

 結局、舞子に出来ることは、お金や権力を背景にした力の行使……。


「大丈夫、任せて」


 舞子は明るく振る舞い、翠川の表情を見ないように帰っていった。
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