ダンデライオン
「あなたを地方へ飛ばせば、考え直してくれるんじゃないかと思ってました。

好きな人のことを思っているあなたの気持ちが冷めるんじゃないかと」

徳井さんの声に、俺は５年前に飛んでいた思考を現在に戻した。

「やっぱり、あの転勤は徳井さんの仕業だったんですね」

そう言った俺に、
「でも、名古屋支社の人手不足は本当だったんです。

それに入社してから３～４年経っている社員は地方へ行くって言うのは我が社の規則じゃないですか」

徳井さんは言い返した。

そんな規則があることくらい、俺も知っている。

「急だったとは言えど、結局はあなたの仕業だと言うことには変わりません」

そう言い返した俺に、徳井さんは５年前に見せた悔しそうな顔をした。

いい加減、俺をあきらめて周りの男に視線を向ければいいのに…と、俺は心の中で毒づいた。
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