ダンデライオン

俺は胸ポケットからスマートフォンを取り出して、時間の確認をした。

休憩時間が終わるまで後５分を切っていた。

そろそろ戻らないといけないな。

そう思い、
「休憩時間が終わるので、もう戻ってもいいですか？」

俺は徳井さんに聞いた。

「…最後に、私の質問に答えて」

徳井さんは悔しそうな顔のままで言った。

「答えたら、俺のことをあきらめてくれるんですよね？」

俺がそう聞いた時、手の中のスマートフォンが震えた。

画面に表示されたのはアサちゃんのお父さんことおじさんだった。

「すみません」

俺は徳井さんに断りを入れると、スマートフォンを耳に当てた。

「もしもし？」

「大変なんだ、忍くん！」

おじさんの慌てたような声に、俺は何があったのだろうと思った。

「麻子が…麻子が病院に運ばれたんだ！」