嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。

「遅刻してきたり色目浸かってきたり、ネイルがギトギトした手で餡をつまみ食いするような人間性を疑うやつばかり来るのが悪い」

「怒り方が怖いのよ! 一言『もう来なくていい』って。そりゃあ皆逃げだすよ。あの高校生だけが『じゃあ明日また来ます』ってめげなかったというか、意味を理解していなかっただけだし」

「住職遅いな。もう時間過ぎた」

「聞いてるの!?」

私の話を無視して、座敷の壁に掛けられた時計を見上げる。
確かに、いつもなら指定した時間より10分は早く来る住職さんが時間を過ぎたのに来ていなかった。
もう60歳を超えるけど、引退するどころかスクーターを乗り回して町内を走りまわる元気なおじいちゃんなんだけど。
晴哉の事も小さなころから知っているから、今日は故人を偲ぶ時に色んな話をしてくれるぐなだろうと期待してたんだけど。


「そういや、最近腰が悪いとか親父に話してたような」

「それよ! ちょっとお寺へ行ってみよう! 倒れてるか痛くて動けないのかも」

「おい、待て」

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