嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。
私が立ち上がり、迎えに行こうとした手を、幹太が掴んだ。

力強いその手に、射抜くようなその真っ直ぐな瞳に一瞬思考が停止してしまう。

全神経が、――腕に集中した時だった。


マフラーの重たい音を響かせながら、家の門にバイクが突っ込んで来た。

「うぎゃー」

情けない声を上げながらバイクは、家の門の段差前で止まろうと急ブレーキをかけたが間に合わない。
そのままハンドルを横に切ると幹太の家との境にある垣根に突っこんで止まった。

受け身を取りながら、投げ出されたように見えたけど、けど。

目の前で見た光景が、――見てもいない晴哉の事故に重なってフラッシュバックが私を襲ってくる。

怖い。怖い怖い怖い。

「桔梗、大丈夫だ。桔梗」
震える私を、幹太が揺さぶる。

ただただ、自分の肩を抱きながら震えている私は、立ち上がった。
晴一、晴一は無事だろうかと。

「まあまあ、どうしたの!? 何の音?」
「桔梗―どうしたのぉ?」

台所からお義母さんと、バイクの向こうからうちの両親と晴一を抱っこしたお義父さんが駆け寄って来る。
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