嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。
でも、それで空気が白けたのが分かった。オカマもそれ以上はもう私たちに突っ掛かって来ることはなく。
おじさんと和菓子の打ち合わせで奥の部屋へ入って行った。
「……幹太はあの人の事、知ってたの?」
すぐに調理場へ戻ろうとする幹太の背中に尋ねた。
幹太は振り向くこともせずに、一言だけ言った。
「晴哉から聞いてた」
晴哉から何を?
ってか、晴哉が知ってたの?
「あ、頭の皮を削ぎ忘れたわ」
今度あのふざけた面を見せたら、削ぐ予定だったのに。
「今から削いで来ようか」
「や、止めときましょう」
美麗ちゃんに苦笑されて、渋々、試食品を摘まむ仕事へ勤しんだ。
祝言ってことは、あのおじいちゃんが住職を引退してあのオカマがお寺を継ぐのかもしれない。
ってことは法要は今度からあいつが引き継ぐのか。
で、祝言の和菓子にこだわるなら、オリジナルの何かを要求してくるかもしれない。
茶会に春月堂の和菓子を注文するなら、お得意先だし、店にも出没する機会が増えるよね。