嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。
私、こいつとちょくちょく顔を合わせなきゃいけないとか無理なんだけど。
嫌だな。全力で逃げたい。
「人は見かけで判断したらいけないかもだけどさ! 第一印象が最悪ならもうずっと最悪よね」
「そうですか? でも平さん、話しやすくて私は嫌いではないですよ」
「じゃあ、美麗ちゃんがこれからあいつの担当してね」
和菓子屋の販売員だって、ここ春月堂は一筋縄ではいかない。
口元の黒子が艶っぽい歌舞伎役者や大使館勤務の外人が通って来るし大物が通ってくる。
機械や材料の仕入れ業者、銀行員とか、意外と出会いは転がっているし合コンだって誘ってくる人もいる。
そんなオフィスラブが起きそうな中でも、私は未だに晴哉以外にときめくこともなければ、――出会いなんて要らないんだもん。
「ふふふふ。じゃあおじさん、宜しくお願いしますね」
「ああ、次は水曜に」
げ。意外と早く奥からオカマが出て来てしまった。
頭皮を剥がしてやろうかと手をわちゃわちゃ動かしてみたら、オカマと思いっきり眼があった。