嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。
あれっきり、幹太は睨むだけで、ちゃんとして言葉を何一つくれなかった。
生まれた時から一緒だから分かるけど、あの状態になると私が幾ら吼えようが、何も教えてくれない。
怒っているのか照れているのか、拗ねているのか楽しいのか。
上手に隠してしまう。
私が幹太の言葉で、どんな感情が湧くかなんてきっと興味ないんだろう。
言いっぱなしで、本当にズルイ。
「桔梗さん、今日は私が残りますよ」
定時の19時になり暖簾を下げていると、美麗ちゃんが暖簾を奪ってきた。
「お子さんがきっと待ってますよ。桔梗さんも心配だったんでしょ? 心、此処に在らずって感じでしたし」
それは、幹太がむかつくからなんだけど、良く考えなくても私と幹太はいつも喧嘩してるから美麗ちゃんには気づかれないのか。
「美麗ちゃんは?」
「今日は実家にお泊りなんです。だから、もうパパも桜ものんびりしていると思います。大丈夫です」