嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。

私が後ろから話しかけたら、ぎょっと背中を上げて飛び上がってくれた。

そんなに驚かなくてもいいじゃない。

「もう19時過ぎてるから、入口は開かないよ?」
「え、嘘! やだー。支度に時間かかっちゃったんだ!」
携帯を取り出して時間を確認すると、真っ青になっている。
ぴっくりしたピンク色の唇が、あんぐりと開いて可愛い。
「何か買うなら、裏から入っていいよ。美麗ちゃんがレジしてるから、私が許可したって言っといて」
「いいんですか?」
きゅるんと大きな眼が嬉しそうに動く。
ころころ表情が変わるその姿にも思わず笑みが零れてしまう。
今さら、ここで駄目なんてとてもじゃないがそんな顔を見たら言えない。

「いいよ。いいよ。もし少数なら、調理場にも幹太がいるから注文してみてね」
「……はい」

一瞬、作りものの笑顔が貼りついたのが分かる。口元は笑っているのに、眼の奥が笑っていない。
19歳って言ってたから、そんなものか。
嘘を吐くのが、まだまだ人生の経験がすくないんだろう。安っぽく見えた。
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