嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。

「私、小学生の時の幹太がぼこぼこにした事件しか知らない」
おじさんの口ぶりでは、武勇伝がまだまだありそうで、なんだか寒気と吐き気が。

「ガキ大将だったからな。晴哉くんが読書してたら外に遊びに行こうとしつこく、図書館まで探しに行ったりして、幹太のやつと何回も睨みあいしてたぞ」

「へえ。知らなかった」

幹太の口ぶりだと、あいつと会うのは久しぶりそうだったし。

「知らん。はやく持ち場に散れ」
途端に不機嫌になった幹太が、私たちに解散宣言を発令するが、餡を冷まし中で手持ち無沙汰なおじさんはお構いなしだ。

「そりゃあ、こいつは和菓子の事ばっかで桔梗ちゃんは晴哉くんの事ばかりだったからな。本当に三人は個性もバラバラで、一緒に居るのが不思議なぐらいだったよ」

「昔の話は良いから、さっさと仕事しろよ」

多分照れてるのだろうけど、その顔は険しかった。
思わず、美麗ちゃんと咲哉くんが恐怖で固まってしまうほど。

< 49 / 131 >

この作品をシェア

pagetop