嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。


「何を照れてるんだか、ねえ?」

未だに口をポカンと開けている咲哉くんに話しかけると、意外な返事が出てきた。

「や、確かに怖いッスが、俺、昨日、配達帰りに見ました」
「見た?」

持ち場へ帰っていく背中に聞かれないように小さな声で尋ねてみる。

「昨日、こっそり裏口から入ってきた美鈴さんに幹太さん、笑ってたッス」

「幹太だって笑うわよ」

「桔梗さん、見たことあるんッスか?」

見たこと……あったかしら?
少なくても大声で笑い転げるような幹太は見たことは無いけど。

昨日、身だしなみを整えていた美鈴ちゃん。
幹太と何を話したのか分からないけど、あの子なら私みたいに幹太と喧嘩ばっかしないよね。

「『っす』ばっか五月蠅いわよ! さっさと仕事仕事!」
「ないんだ……」

咲哉くんの発言に、思いっきり睨みつける。
桔梗ちゃんなら分かるかな?

詮索とかはしたくないけど。
……別に知りたくないから良いけど。

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