嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。
今日は予約の和菓子も一件で数も少なく、お店に和菓子を買いに来てくれる方々も平日だからそんなに多く泣く平和だった。
もう少しでお彼岸だから、おじさん達が餡の仕入れや仕込みで忙しくなるけど、それも数日だし。
私もおはぎを予約しとこう。此処のは人気があるし。
「こんにちは」
自動ドアが開閉して、下駄の音を鳴らしながらやって来たのは、美鈴ちゃんだった。
「いらっしゃいませ。何にします?」
「うふふ。おはぎを。母が定期的に食べたくなるみたいで」
珍しく、着物ではない美鈴ちゃんは、春らしい黄色のワンピースに、髪を下ろして雰囲気が大人っぽくなっていた。
薄いピンク色の唇が羨ましい。
「了解です。あ、幹太! 幹太!」
「……うるさい。そんなに大声出さなくても聞こえてる」
と言いつつも、なかなかこっちには出て来ない。
仕方が無いので、おはぎを包みながらおまけにどら焼きを入れておいた。
「ごめんね。あ、どら焼き入れておくから食べてね」