英雄の天意~枝葉末節の理~
 戻ってきた仲間に喜ぶ村人たちのなかに、慌てて出てきたラーファンの両親を見つけて胸が痛んだ。

「ラーファンは? ドラゴンは倒したのか?」

 口々に尋ねられ、ナシェリオは重々しく説明を始めた。

 ドラゴンにはまるで歯が立たなかったこと。

 それによってラーファンが命を落としたこと──自分の身に起こった事はとても言えなくて伏せたままに、ドラゴンが寿命で死んだおかげで自分は助かったのだと話した。

「そんな……。ラーファンが」

 村の人気者だったラーファンが死んだと聞かされた人々は哀しみと落胆に沈黙した。

 彼の母親は夫の胸に顔を埋めて泣き声を殺し、夫は妻を抱きしめて静かに涙を流した。

 そんな光景に耐えきれずナシェリオは顔を背けた。

 そのとき、
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