英雄の天意~枝葉末節の理~
「でも、ナシェリオはドラゴンを倒したってことになるんじゃないか?」

 そんなひと言が周囲の空気を一変させた。

 何を言い出すのかと驚くナシェリオを横目に村人たちの表情は希望を見い出したかのように輝いた。

「そうだよ。ドラゴンの寿命に立ち会える人間なんてそうそういない」

「目の前でドラゴンが死んだのだから倒したことになるよ」

 どうあっても村から英雄を作りたいのか、ラーファンの死から目を背けたいのか、人々はこぞって沸いた。

「みんな、待ってくれ」

 どうしてそうなるのか解らない。

 私はドラゴンを倒してなどいない。

 ナシェリオは狼狽えれども、村人たちは彼の変化に気付いていた。

 久方ぶりに見たからではない。

 明瞭なまでに彼の存在感は増しており、外見はいっそう麗しく神秘性を備えるまでになっていた。
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