英雄の天意~枝葉末節の理~
 それはまさしく、ドラゴンを倒したことによるものに他ならないと村人たちは考えたのだ。

 ラーファンの両親はにわかに活気づいた周囲に戸惑い、弾き出されるように輪の外に追いやられ呆然とみんなの喜びを見つめていた。

「ドラゴン殺しの英雄だ」

 違う、そんなことはしていない。

「大事な友達が死んで悲しいのは解るよ。でも、俺たちの希望も考えてくれよ」

 希望だって?

 無理矢理に創り出された希望などになんの意味があるんだ。

 そこに私の意思などありはしないじゃないか。

「さあ、今夜は宴会だ! みんなを集めろ」

「待ってくれ! ──っ私は」

 伸ばした手に誰をもつかみ取る事は敵わず。

 よしんばドラゴンから力を受け継いだという真実を明かしていたならば、さらなる英雄譚が積み上げられていたことだろう。
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