英雄の天意~枝葉末節の理~

*再構のエピック


 闘いを終えたナシェリオは、落ち着くと額の血を拭い手綱を受け取った。

「噂に名高いシュロタスタルの剣ですね」

 ぼそりとつぶやいたニサファを一瞥し、村に向かうため歩き出す。

 古老の面差しにはどこか物足りなさがあった。

 彼が聞き知った剣の力はこんなものではないからだろう。

 エルフにより鍛えられたとされる古の剣には古代文字が刻まれ、万物を司る精霊の力が宿っているとされている。

 持ち主の意思をその刃に現し、眼前の敵がどれほどいようとも必ず打ち倒して勝利に導く。

 そんな伝説がある。

 もちろんそれは誇張されたものだろう。

 もしくは、剣の力を引き出すにはそれなりの条件が必要なのかもしれない。

 ──ついぞ失われていた剣の物語は、英雄の剣として再び蘇る事となった。

 しかし、ナシェリオにとって、それは呪いの剣でしかない。




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