英雄の天意~枝葉末節の理~
「大した魔法使い(ソーサラー)は見つからなかったようだがな」

 魔法というものは、やはりソーサラーによっても効果の強さが異なる。

 息子を守るためにも強力なソーサラーを探していたようだが、生憎と見つからなかった。

 たった三日の旅路にも不満を漏らす領主の息子は当然のごとく目的の洞窟に入るのを嫌がった。

 ドラゴンが棲むという洞窟はいかにも暗く、じめじめとした陰気な場所だ。

 中はゴツゴツとして歩きづらく、どこからともなく聞こえる水滴のしたたり落ちる音がやおら恐怖心を掻き立てる。

 道楽息子はどんなに説得しても入りたがらず、尻でも叩いてやろうかとも考えたが他の者がそれを制止し、やむなく洞窟からドラゴンをおびき出す事となった。

「そこには何が」

「ブラックドラゴンだ」

 紡がれた名にナシェリオは眉を寄せた。

 魔法は使わないものの、強い酸の息(ブレス)を吐き出すドラゴンだ。

< 87 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop