らぶ・すいっち





「どうして今日、私を講演会に連れて行こうと考えたんですか?」


 英子先生に是非にとお願いされて講演会に行くことにしたのだが、なんだか色々腑に落ちないことがある。

 英子先生が言うように、平日に休みがとれる私にお鉢が回ってきたことはわかる。
 だけど、よくよく考えれば土曜メンバーの大半は専業主婦の人が多い。となれば、料理経験もあり、向上心もあるおば樣たちにお願いするという手もあったはずだ。

 それに一人だけではなく、もう少し多くの人が講演会に出向くこともできただろう。
 英子先生からいただいた書類には“たくさんの方に受講していただきたい”という言葉も記載されていた。

 それなら土曜メンバーにもっと声をかけても良さそうなものだ。
 そのことを順平先生に言うと、クスクスと笑い声を上げた。


「それはですね」
「はい」
「須藤さんと二人きりで行きたかった。それだけですが、なにか?」
「っ!」


 何を言い出した、順平先生。まっすぐ前を見ていた私だったが、さすがに横でハンドルを握る順平先生の横顔をまじまじと見つめてしまった。

 私の視線を感じたのか、順平先生は笑みを深いものにする。


「もちろん英子先生が貴女に言ったことは嘘ではないですよ?」
「え?」
「今日は平日の火曜日。OLさんたちやお仕事をされている方は、急に休みなど取れないでしょうからね」
「は、はぁ……そうですよね」
「その点、須藤さんは火曜日が休みだということは入校するときにチェック済みでしたから。お願いはしやすいですよね」


 そのとおりだ。そのとおりだけど、まだ疑問は残っている。
 私が安易に頷かないことに順平先生は気がついたのだろう。フッと笑い声をだし苦笑した。



< 120 / 236 >

この作品をシェア

pagetop