らぶ・すいっち




「今まで君のようなタイプは毛嫌いをしていたはずなのに。気がついたら君のことしか考えられなくなっていた」


 毛嫌いをしていたという順平先生に、私はそうだろうと深く頷いた。

 美馬クッキングスクールに入会しようとした私に、順平先生は冷たくて意地悪だった。
 それに、なんといっても元彼女は牧村さんだ。私とは雲泥の差があるだろう。
 タイプも違うし、容姿も、全然違う。
 それなのに順平先生は私がいいと言ってくれるのだろうか。

 熱くなる頬を両手で隠したが、顔を上げる勇気などない。
 それなのに順平先生は、私の耳元で熱っぽく囁いた。


「このまま、ここで押し倒したいほどの欲情を抱えているほどに、好きだ」
「っ!」


 言葉が出てこない。俯いたまま固まり続ける私に、順平先生はゾクゾクとするほど甘美な声で問いかけてくる。


「で、どうなったのですか? あの編集者と付き合うことにしたのですか?」


 私は順平先生に誘導されるように、小さく呟いていた。


「……断りました」


 すると順平先生は私の頭をゆっくりと撫でてきた。
 大きくて温かい手は、私の緊張した心を解きほぐしていくようだ。だが———


「それは私のことが好きで断ってくれたと解釈していいですか?」
「よくない、よくない、よくないです!」


 思わず自分の気持ちと正反対のことを口走ってしまった。

 
(ああ、もうどうして……)


 言った言葉はなかなか取り戻せない。

 本当は順平先生のことが気になってしかたがないくせに。意地っ張りな自分に涙が出てくる。

 すると順平先生は私の髪を弄ぶようにしたあと、頬にかかってしまった髪を耳にかけてくれた。
 でもこれではダイレクトに順平先生の声が届いてしまう。

 慌てる私に、順平先生はフッと私の耳に息をかけたあと、吐息がかかるように耳元で囁いた。



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