らぶ・すいっち
「じゃあ、この前のキスでは君のスイッチが入らなかった、と。そういう訳ですね」
「へ?」
どういう意味だろうか。
順平先生に意味を聞こうと顔を上げようとしたのだが、それは叶わなかった。
順平先生は自分のシートベルトを外したあと、今度は私がつけていたシートベルトも外してしまった。
そのままシートを倒され、先生に覆い被さられた。
「順平せんせっ!」
私の声は、すべて順平先生がかき消してしまった。
深くなるキスは、甘くて蕩けてしまいそうだ。こんなキス。今までにしたことがない。 キスだけで、身体が震えるなんてこんなことってあるんだ。
力なくそのままシートに身体を預ける私に、先生は真剣な顔で覗き込んできた。
「君は、好きでもない男にキスされても何とも思わないのですか?」
「え?」
「もし、元彼だという編集者が君にキスをしてきたとする。そのとき、君は今のようにキスに応えますか?」
先日のことを思い出す。合田くんにキスをされそうになったとき、私はどうした?
嫌だ、と思って顔を背けなかったか。
私はゆっくりと首を横に振った。
「キスなんて……しない」
「じゃあ、何故私のキスには応えるのですか?」
「何故って……」
そんなのわからない。ううん、わかってる。
私は順平先生のことが好きだから。だから、強引なキスでも応えてしまう。
もっとしてほしいと願ってしまうのだ。
戸惑って視線をぼやかせる私に、順平先生は優しくほほ笑んだ。
「君の身体にはもうスイッチが入ったのですよ」
「え?」
「恋愛スイッチが、ね」
「じゅん、ぺい……せんせ」
再び私を襲う甘くて痺れてしまうキスは、そのあとも続いたのだった。