らぶ・すいっち
「それって反則です」
「反則なんですか? 君が名前呼びがいいと言ったのでしょ?」
「そうですけど……なんか順平先生は、私をからかっているだけみたいに思います」
「そうでしょうか?」
「京ちゃんって呼んだかと思えば、京って呼んだり……ズルイ」
「っ!」
今の京の表情と声に、グッときてしまった。
京をドキドキさせてみようと仕掛けたはずなのに、反対にこうして私がやられてしまっている。
こういうところが、“須藤京香、最強説”の所以なのかもしれない。
それなのに私が声につまり、口元を抑えている理由さえ彼女にはわからないのだ。
どうしたんですか、と心配そうに私の顔を覗き込む、その仕草。
それにやられてしまう私も、どうかと思う。
自分で彼女に言った言葉“恋愛のスイッチ”うんぬんは、こういうところでオンされているんじゃないかと憶測できる。
とりあえず、今日彼女を呼び出したのは用事があったからだ。
コホンとひとつ咳払いをしたあと、私は京にほほ笑んだ。
「とりあえず席に座りましょうか」
まだ心配そうな彼女を席に促し、私は顔なじみのウェーターを呼ぶ。
今日のオススメはどれかと聞くと、ディンブラだという。
京に何がいいかと聞けば、わからないので先生オススメでお願いします、という返答が返ってきた。
それを聞いた私は、ウェーターにディンブラを使ったミルクティーを頼んだ。
ウェーターが席を離れたあと、京は私にこっそりと聞いてきた。
「先生。ディンブラってなんですか?」
「ああ。紅茶の茶葉の名前ですよ。癖がないので、とても飲みやすいはず」
「へぇ…… 」
「癖がないからこそ、アレンジティーなどに応用が利くんです」
そうなんですか、と茶葉の説明が書かれてあるメニュー表を見て京は頷いた。
茶葉の生産地や、他の茶葉のことなどを話していると、頼んでいたミルクティーがやってきた。
「ほら見てごらん。キレイなクリームブラウンでしょう?」
「はい。ザ・ミルクティーって感じです。可愛い色!」
「あはは、本当そうですね」
京は目を輝かせながら一口含むと、目を大きく見開く。
その表情が可愛らしくて、思わず噴き出してしまいそうになる。