らぶ・すいっち
「わ、私でお手伝いできることがあれば……と言っても、料理オンチですのでコレといったことはできないんですけど」
困ったように眉を寄せる京に、お祖母さんはホホホと楽しげに笑う。
「いいのよ、須藤さん。貴女はお客様なのだもの。座っていらして」
「で、でも……」
渋る京に、お祖母さんは茶目っ気たっぷりに片目をパチッと瞑る。
「今日は貴女にたっぷり食べてもらいたくて作り過ぎちゃったのよ。頑張って食べてね」
「それはもちろん! 英子先生の料理をいただけるなんて光栄です」
テーブルに広がるのは家庭料理のオンパレード。炊き込みご飯に野菜が中心の具だくさんお味噌汁、筑前煮、カラリと揚がった天ぷら、煮浸しに、白和え、などなど。
お祖母さんは、本当にたくさんの料理を作ったようだ。
「お祖母さん、さすがにこれは作りすぎじゃないですか?」
「そう? だって順平のお嫁さんになる人がやっと現れたのよ? これから仲良くしてもらいたもの。腕だって鳴っちゃうわ」
サラリとすごいことを言い放ったお祖母さんを見て驚いていると、お祖母さんは「あら?」と首を傾げてきた。
「そのつもりじゃないの? 順平。貴方がこんなふうに家に連れてくる女性って今までいなかったじゃない。須藤さんは特別、なんでしょ?」
嘘は許しませんよ。お祖母さんの瞳の奥は厳しく光っている。
もちろん嘘などつくつもりは毛頭ない。私は頷いた。
「もちろんですよ。京ちゃんは特別な人ですから」
正直な気持ちを告げると、お祖母さんは満足げに「よろしい」と何度も頷いた。
そんな私たちの会話を聞いていた京はといえば……やっぱり目を大きく見開いて固まってしまっている。
お祖母さんも京の様子を見て苦笑したあと、「先走りすぎちゃったかしら? 気にしないでね」と穏やかに笑みを浮かべる。
気にしないで、と言われても京にしてみたら気になってしまうことだろう。
彼女の胸中が手に取るようにわかり、思わずにやけてしまいそうだ。