らぶ・すいっち





 さきほどお祖母さんが言っていたこと——— 順平のお嫁さん———にあのときはびっくりしたが、なぜかストンと腑に落ちた。

 ああそうか。そうすればいいのか、と。彼女を名実ともに私の可愛い人にしてしまえば、この欲は落ち着いてくれるのかもしれない。
 これは近々、ジワリジワリと彼女に結婚を意識させていくように動かなければならないだろう。

 忙しくなりそうだが、それよりまずは彼女を送り届けるのが先だ。


「では、お祖母さん。彼女を送ってきますね」
「はいはい。じゃあね、須藤さん。またいらしてね!」


 にこやかに手を振るお祖母さんに、京ははにかんだ。


「ありがとうございます。タッパーはまた後日返しにきます」
「いいのよ、いつでも。もう使わなくなってからでいいから、料理教室の日に持ってきてくださればいいわ」
「わかりました。では、おやすみなさい」
「ええ、おやすみなさい」


 彼女を助手席に座らせ、扉をゆっくりと閉める。
 辺りは静まりかえっており、お祖母さんは私に近づいて小声で呟いた。


「本当にこの子は。あんまり須藤さんを困らせてはダメよ?」
「今日は彼女のところで過ごしますので、戸締まりよろしくお願いします」


 お祖母さんへの返事は曖昧に濁し、私は運転席に乗り込んだ。




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