らぶ・すいっち
後日談 その対決は突然やってきた! 1





『もう順平先生! 私、完全に風邪は治りましたので大丈夫です!』
「そうはいっても京ちゃん。風邪を馬鹿にしていてはいけません。風邪は万病の元ともいいますから。治ったと思った頃の油断が大敵ですよ」
『いやでも……。順平先生だって忙しいでしょ? 私だっていつもどおり仕事に行っているんだから、もう大丈夫ですって』


 子供じゃないんだから、と電話先でブーブー文句を言い続ける京に、私はこっそりと思う。

 きっと子供の方が大人の言うことをきちんと聞くだろう。
 京は確かに仕事に復帰した。いつも通りの生活は送れている。そこまでは私もわかっている。

 だけど、心配で心配で仕方がないのだ。

 ずっと一人暮らしをしていたのだから、体調さえ戻れば大丈夫だと京は言う。
 しかし、あのとき——— 熱でうなされていたとき ——— 一人が寂しいと呟いた京の表情が忘れられない。

 ふとしたときに現れた素の京。それがわかっていて一人になどしておけるはずがない。

 やっぱり早々にも京と同棲する手はずを整えなければと思っているのだが、さてどうやって京を説得しようか。

 以前美馬の家でうんぬんという話を京にしたが、断固拒否体勢であった。
 美馬の家では———特にお祖母さんが——— かなり乗り気だったけど。

 でもまずはやっぱり二人きりの時間が欲しい。そう思って同棲の話をしたが「英子先生が一人になってしまう!」と、こちらも断固拒否の姿勢。

 さて、この子供より言うことを聞かない愛しい京ちゃんをどうして調理しましょうか。

 考えることは楽しいが、さて京のへそを曲げさせず、うまく円満解決するにはどうしたらよいか。悩みどころではある。

 それにしても、と私は先ほどの京のセリフを思い出す。京の口から出ることはいつも一緒。
 私の仕事に関しての心配、そしてその仕事が忙しいので私の身体が心配ということばかり。

 京が心配してくれるのはとても嬉しいことですが、私だけが京と一緒にいたいと願っているようで面白くない。

 電話越しの聞き分けがない京に、私は思いっきり拗ねた。



< 214 / 236 >

この作品をシェア

pagetop