らぶ・すいっち




 渋々と部屋の中に入り、入り口付近で突っ立っていると順平先生に手招きをされた。
そこはいつも順平先生が調理方法を指導するときに使う教壇だ。

 その教壇にはコンロも流しも備えられており、先生はいつもこの場所に立ち、デモンストレーションをするのだ。

 いつもは見る側の私だが、恐る恐る先生が立つ場所へと足を運んだ。


「えっと……書類の不備は?」

「あれは口実ですね」

「口実ですか」

「そうです」


 サラリと言われてしまっては、何と言葉を返せばよいものかわからない。

 黙り込む私に、何も言わない順平先生。

 教室は私たち二人だけなので、黙りこくっていては沈黙が続くだけだ。


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