らぶ・すいっち



 
(え……?)

 なんだか怒っている? 
 唇には笑みを浮かべているのに、目が怒っているように見える。
 眼鏡越しの瞳は無表情に近いのに、何かを訴えているようだ。
 よほど合田くんの言った言葉に怒りを感じたのか。それとも個人レッスンのことを土曜メンバーの前で改めて強調してしまった私のことを怒っているのか。
 どうしようと戸惑う私を見て、順平先生は背を向けた。

「さぁ、皆さん。手が止まっていますよ。楽しみながら料理を続けましょう」

 鶴の一声。順平先生の声で誰もがハッと我に返り、弾かれるように作業を開始した。
 私もそれに続こうとしたが、合田くんの言葉に再び固まってしまった。

「今日の夜、メシ食いに行こうぜ? 居残りが終わってからでいいからさ。あとで連絡する」

 それだけ私の耳元で囁いたあと、カメラマンと取材を開始してしまった。
 私は順平先生と合田くんを遠目で見つめたあと、おば様たちの指導のもと料理を開始した。


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