らぶ・すいっち



 
(ああ、もうもうもう!!)


 クッションをギュギュッと抱きしめながら悶絶すること、すでに数十回。
 そのうちクッションから中綿が出てきそうなほど、力強く抱きしめている。

 あの順平先生とキスをしてしまった。
 私の気持ちも聞かず強引にキスをされてしまったが、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。

 それは私が先生のことを好きになってしまったからなのか。
 それとも、イケメンに迫られて流されてしまったからなのか。

 いずれにせよ、私の心をひどく乱したのは確かだ。
 ギュッと再びクッションを抱きしめ、大きくため息をついた。


「これからどうしよう……」


 来週の土曜日には、必ず順平先生と会うことになる。
 まさか気まずいからといって教室をやめるわけにもいかない。

 私は土曜教室の雰囲気も、一緒に習っているおば様たちも好きだ。
 それに少しずつだけど料理だって上達してきている。ここでやめてしまったら、元に戻ってしまうだろう。それだけは避けたい。

 だけど教室に通うということは、順平先生と必ず会うということ。
 そのとき、私はどんな顔をして順平先生と接すればいいのだろうか。

 もし、個別レッスンをすることになったら……二人きりを免れない。
 ああ、もう。どうしたらいいのだろう。



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