らぶ・すいっち




 何度もため息をついていると、再びインターフォンのチャイムが鳴った。

 セールスの人が粘っているのだろう。息を潜めていなくなるのをジッと待ってみていると、チャイムは鳴らない。
 どうやら諦めて帰ってしまったようだ。

 やっぱり勧誘の類だったのだろう。私は再び、迷路のように答えが出ない悩みにウンウン唸りだした。

 しかし、今度は私のスマホが着信を知らせてきた。慌ててスマホをカバンから出して確認すると見知らぬ番号からだ。
 そのまま無視をしようかと思ったが、ふと数時間前のことを思い出した。

 合田くんに今日、一緒にご飯を食べようと誘われていたはずだ。
 あとで連絡すると言っていたから、きっとこの電話の主は合田くんで間違いないだろう。

 今は独りで考え込んでいたいから、合田くんと和気藹々と食事だなんてできないし、そんな気分じゃない。
 きちんと断ろう。一度断ってしまえば、きっと合田くんは連絡をしてこないだろう。

 今日私を誘ったのは、懐かしさもあってのことだろうから。
 通話ボタンを押し、「もしもし?」と電話に出ると、やっぱり合田くんだった。


「おい、京香。なんで出ないんだよ」

「え? ちゃんと電話に出たわよ?」


 スマホは何度も着信を知らせてはいないはず。着信履歴をみても、合田くんからの電話はこれが最初のはずだ。
 首を傾げていると、電話越しに大きなため息が聞こえる。


「電話じゃなくて、インターフォンだ」

「インターフォンって……」

「今、押しただろう?」


 確かに先ほど家のチャイムが鳴った。だが、それはセールスなどの勧誘だと思って出なかったのに。もしかして、あのチャイムは合田くんだったのだろうか。

 いや、しかし。合田くんは私が住んでいるアパートの住所を知らないはずだ。
 それなのに何故……?



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