らぶ・すいっち




「相変わらず冗談が通じない女だな」

「合田くんが言うと冗談に聞こえない場合も多いから、こちらとしては判断に困るの」

「そうか?」

「そうだよ。昔からそうだった。冗談でしょ、って思っていると痛い目に合う」


 冗談で言われたはずだとこちらが思っていても、それを本当に実行してしまう。

 高校生の頃、そんなことはたびたびあった。
 内容としては、些細なことが多かったから痛手にはならなかったけど。

 それでも油断ならない相手だということは確かだ。

 だからこそ、久しぶりの再会であんなこと——— フリーなら俺と付き合わない? 
 ——— を言われて、警戒心を高めたのは仕方がないことだ。

 それを目の前の男はわかっているのか、それとも意図的にわかっていない振りをしているのか。

 くせ者だからこそ、読めない。
 それに逆らえない何を感じるのは、この男だからなのだろうか。

 どうやら私は難しい顔をして考え込んでいたのだろう。
 信号で止まっているときに、彼は私の顔を覗き込んできた。

 突然の至近距離に、ビックリして胸がドクンと高鳴る。


「あのな、京香。冗談なのか、本気なのか。男の言葉を読み取る技術を、そろそろ取得したほうがいいぞ」

「な、なによ……それ」


 訳が分からないことを言い出した。
 戸惑う私にチラリと視線を向けたあと、信号が青になり、彼はゆっくりと車を動かした。

 合田くんは真剣な顔つきで、肩を竦めた。



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