らぶ・すいっち
「ここなら、二人でゆっくり食事することができるだろう? で、今日は何にする?」
「先輩のお任せでお願いします。京香は、それでいいか?」
慌てて頷くと、宇佐見さんはニッと口角を上げた。
「じゃ、須藤さんが喜んでくれるように頑張って作ってくるわ。少し待ってってな」
「お願いします」
宇佐見さんが部屋から出て行くと、何故か沈黙が私たちの間に落ちた。
なんとなく合田くんと顔を合わせづらい。
いつもなら合田くんがあれこれ話してくるのに、なぜか何も言ってはくれない。
だからこそ、彼らしくない雰囲気に私も戸惑うしかできなかった。
「なぁ、京香」
やっと口を開いた合田くんに安堵したあと、私は「なに?」と答え、テーブルにセッティングしてあったおしぼりに手を伸ばした。
温かいそれは、とても気持ちがいい。ゆっくりと手を拭いていると、合田くんは何故か真剣な表情で私を見つめていた。
「あの料理教室に通って長いのか?」
「……えっとね。半年ぐらいかな」
どうして? と聞き返すと、合田くんは私の質問には返答はせず、お冷やに手を伸ばした。
一口飲んだあと、彼はグラスをテーブルに置く。
「あの先生さ……」
「え?」
「お前に気があるな」
「っ!」
何も言えず固まる私を見て、合田くんは深く息を吐き出した。
「あの先生は、京香に気がある。間違いない」
合田くんに断言され、私は顔を紅潮させた。