らぶ・すいっち



「なんだよ、合田。久しぶりだな」

「久しぶりっす。今日はなんと、可愛い女子も連れてきましたよ」

「おおっ!! 俺に紹介してくれるつもりでか?」

「何言ってるんですか、先輩。ダメですよ」

「なんだよ、ケチだな。お前はモテるんだから、彼女もいない哀れな先輩に女の子を紹介してくれたってバチは当たらないはずだ。お前を面倒見てやったこと。忘れたとは言わせないぜ?」


 ニマニマと笑いながらも、合田くんを見つめる視線は優しい。

 合田くんの様子を見ても、この人に心を許しているのがわかる。
 その人は、私の顔を見ると、小さく会釈をして歓迎してくれた。


「初めまして。私はこの店の店長で、合田の大学の時の先輩になります。宇佐見です。今日は当店にお越しいただきありがとうございます」

「こちらこそ、初めまして。須藤と言います」


 慌てて頭を下げる私に、宇佐見さんは人の良さそうな笑みを浮かべる。

 その様子を見ていた合田くんは、突然私と宇佐見さんの間に割り込んできた。
 私を背に隠すような行動に、私も宇佐見さんも目を丸くする。


「宇佐見さん、彼女は勘弁してくださいよ」

「……へぇ、珍しいこともあるもんだな。この店に女の子を連れてきたのも初めてだし。合田の大切な子ってことか? 了解、手は出さないから心配するな」


 クスクスと笑う宇佐見さんに、合田くんはどこか居心地が悪そうな表情で髪を触っている。

 居心地が悪いのは、彼だけではない。私もだ。

 あんなことを言われたら、ドキドキしてしまうだろう。

 合田くんのことなので、八割方冗談だと思っていて間違いないのだろうけど。
 宇佐見さんは私に意味ありげな視線を送ってきたあと、私たちを個室へと案内してくれた。



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