らぶ・すいっち




「本当に料理がしたいわけですか? 私に興味があるだけなら、余所に行ってください」

 受講を希望しようと受付にやってきていた私に対し、順平先生の第一声はこうだった。

 貴方目当てでやってくる女子が多いことでしょう。それでほとほと疲れているというのも何となく想像はできた。
 だけど、私に限っては順平先生が目当てで、このクッキングスクールを選んだわけではない。

 選んだ理由は、仕事帰りに寄りやすく、アパートから近い。それだけだった。
 メディアに出ている先生がいることも知ってはいた。だけど、そんな有名人に教えてもらおうなんて露ほど考えてもいなかった。

 そんな私にこの暴言。どう考えても失礼以外の何ものでもない。
 私は怒りを隠さず、順平先生に申込書を押しつけた。


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