Destiny
その声に顔を上げるけれど、涙で滲んでよく見えない。
「え~何おにーさん、邪魔するわけぇ?」
「ヒーロー気取りとかウッゼ!どっか行けよ」
「抜けたとはいえ、まだこの街は俺の管轄なんだよ。
好き勝手してんの見過ごすわけにいかない。
ましてや、女泣かせる奴は排除対象として見なしても仕方ないだろ」
腕は離され、男たちは彼に近寄って行く。
「俺の管轄~?おにーさん何言っちゃってんの~?」
「…え、うわ、こいつもしかして…っ」
「…へえ、知ってんの?じゃあ話早いな」
「フード被ってないから気づかなかった…!おい、行くぞ!」
「はあ?何だよ~」
「ばっか、キョウだよ、"キョウ"!」
「は?! あの"暴君"かよ!!」
ばたばたと逃げていく酔っ払い達を見送り、
彼は菜々瀬に近づいた。