Destiny
「おや。菜々瀬さん、芹さん、ようこそ」
それからまったく表情を変えずに続けられた言葉。
「来ちゃいました。あの、その節はご迷惑おかけして本当に申し訳ないです!
これ心ばかりなんですけど、よかったら閉店後にでも食べてください!」
芹はぺこりと頭を下げて、持っていた紙袋を手渡した。
中身は知っている。大学のカフェテリアのサンドイッチだ。
「働いた後ってお腹空くんじゃないかなって。
でも時間が時間だから重い物は食べないだろうし、じゃあサンドイッチならいいかなって思って…
あの、もう一人のお兄さんの分もあるので!」
「お気遣いありがとうございます。有り難く二人で頂きますね」
マスターの微笑みに、芹の目がハートになっているのがわかる。
「ボックス席の方がよろしいですか?」
「カウンターでいいならカウンターがいいです!」
「構いませんよ。ああ、申し訳ないですが、端の方にお願いしますね。
その方がゆっくりしていただけますので」