うそつき王子の秘密のキス
 こっ……怖かったよ~~


 ウチの学校、そんな無茶苦茶荒れているワケじゃないけど。


 やっぱり怒っている人がものすごい勢いで走って来るのを見るのは、心臓に悪い。


 急に元気になった井上君の代わりに、わたし、へたへたと保健室の椅子に座り混んじゃった。


『大丈夫?』


 先生への手紙を書きあげたらしい。


 わたしの様子を見た井上君が、メモを片手に聞いてきたけれど。


 ……ははは。


 わたし、心の中でちょっと乾いた笑い声をあげて、井上君に手を振った。


「あっ、あの。わたしは、大丈夫……だけど。
 ちょっとだけ休んでから帰ろうかな……と」


 ……なんて言ったら、井上君は、意外にキレイな眉を、すっとよせ……何やらメモに書き出した。


『二階堂たち、かなり怒ってる。
 なるべく早く帰った方が良い。
 できれば、ヤツらのそうじ終わる前に』


 う……うん。


 保健室に来る時、すれ違ったらカンカンに怒ってたよね。
 

『いつもどうやって、学校に来ているんだ?
 電車? バス? 今日は、送る。一緒に帰ろう』


 さらさらと書かれてゆく言葉に、わたしはいいよって手を振った。
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