Fun days

お茶

そのあと美桜は、
部室棟から食堂に上がる階段、
休講を知らせる掲示板、
色々な場所で写真を撮った。

さすがに退屈かな、と美桜が村田を見ると、
じっと蟻を見ていたので、そっとしておいた。

階段の上からグラウンドを撮っていると、
さっきより太陽が
地平線に近づいていることに気づき、
携帯電話で時計を見る。
15:48。
思っていた以上に遅い時間だった。
あわてて村田を探す。

「ごめん、村田。もうすぐ4時」

蟻の巣をのぞいていた村田が、
顔を上げて、立ち上がる。

「バイトの時間、大丈夫?」

美桜が村田に聞く。

「夜からだから全然平気だよ」

「良かった。お茶飲んで帰ろう」

美桜は村田から鞄を受けとって
カメラをしまい、二人で食堂へ向かった。


「いい写真撮れた?」

めずらしく美桜がおごってくれた
コーヒーを飲みながら、村田は聞いた。

「うん。たくさん撮れた。
 幼馴染みに現像してもらったら
 村田にも見せてあげるね」

…忘れてた。
美桜の幼馴染み…

「…その人、
 写真研究会だったんだっけ?」

興味はないけど、気にはなる村田。
冷めた声で聞く。

「うん、そう。もう10年も前」

笑って美桜は言う。
冷めている村田を気にも留めない
はにかんだような笑いかた。

「じゃ、おじさんだね」

嫌みを言ってみる。

「うん、かなりのおじさん」

笑って答える美桜。

嫌みに気づかないのか?
それとも俺の気持ちごとスルー?
余計面白くなくなる。
あからさまにつまらない顔をしてしまう。

「ねえ、村田はいい写真撮れた?」

美桜の言葉で思い出し、
携帯電話を取り出して、写真を見る。
ぶれてたり、後ろ姿だったりの美桜。
でも全部かわいい。

「…これが一番いいかな」

自信ありげに笑いつつ、美桜に見せる。

「え、これ?うーん…変な顔…」

美桜が不満そうに言う。

そうかなー?
可愛いと思うけど。

「ちょっと貸して」

美桜はそう言って、村田から携帯を取り上げる。
慣れた手つきで携帯を操作し、
勝手に自分を撮りはじめる。

「…はい、こっちのほうがいいでしょ」

自分の顔の写真を表示させて
自信満々で携帯を村田に返す。

…確かにかわいい。
ちょっと可愛すぎて、直視できないくらい。

にやけてしまうのを隠せそうにないので、
頬杖をついて顔を覆う村田だった。
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