Fun days

来校

学食で村田は、教育学の教授の真似を披露していた。
大崎と和美は愛想笑いをしている。
それに全く気づかない、変なテンションの村田。

そんな村田をニコリともせず観察する美桜。
みんなが自然に笑っているのを、撮りたいのになあ。
全然自然じゃない…

すると、美桜の携帯が鳴った。
携帯を見て目が丸くなる美桜。
真ちゃんからの電話だ。

「もしもし?」

『美桜?俺。』

まぎれもなく真ちゃんの声。

『時間出来たから学校に来たんだけど。
 いまどこ?』

え…?
学校ってここだよね?
…ものすごく急だなあ。

「学食にいるよ」

『じゃ行くから待ってて』

美桜が答えると、すぐに電話は切れてしまった。
本当に真ちゃんだよね?
携帯をまじまじと見る美桜。
真ちゃんの名前と”通話終了”の文字が浮かぶ。

「美桜、どうしたの?」

「…今から真ちゃんがここに来るって。
 あ、幼馴染ね」

和美に聞かれて答える美桜。

「…え?ほんとに?」

ご機嫌だった村田が焦り始める。

「ちょっと、俺、用があって…」

そわそわと帰ろうとしている。

「村田、大丈夫だよ。おちつけ」

大崎が声をかける。

「で…でも…」

村田がリュックをつかんで、立ち上がろうとすると

「あ、きた」

美桜が言って立ち上がった。
村田は大崎にひっぱられて、無理やり座らされている。

「しんちゃーん。こっち~」

美桜が手を振って大声で呼ぶ。

恐る恐る振り返って、真二を見る村田。
やっぱり、すげー男前…
予想通り。
現実を見たくなくて、うつむく。

「それにしても突然来たね」

「うん、突然時間が空いた」

美桜と真二が話している。
自然で親しげな会話。
本当に本物の幼馴染が来たんだな…

「いつも仲良くしてくれてる友達です」

美桜が真二に、自分たちのことを紹介し始めた。

「こんにちは」

さわやかに微笑みながら、挨拶をする大崎と和美。
村田は頭を少し動かしただけ。

「美桜、友達作るの下手なんで、よろしくね」

真二が言う。

「そんなことないし」

美桜が不満そうに言う。

「…君が村田君?」

ふいに呼ばれて思わず顔を上げる。
目の前で見ると、本当にいい男だった。
おじさん、じゃないじゃん。
美桜のうそつき。
そう思いながら

「…はい」

こわばった表情のまま返事をする村田。
笑い返したりできない。
真二は微笑んでいる。
何その余裕の笑み。
勝ち目がまったくないから
心の中で負け惜しみを言って、目をそらす。

「美桜は素直じゃないから大変でしょ。
 がんばってね」

意外な言葉が敵から出た。
思わず真二の顔を見る。
やっぱり余裕の笑み。

「なにそれ」

村田が言う前に美桜が言った。

「じゃ、写真研究会、行こうか」

美桜の質問に答えず、真二は言う。
腑に落ちない顔で鞄を持つ美桜。

「…俺も行っていいですか」

考えるよりも先に言葉が出た。
自分でもびっくりしてしまう村田。

「いいよ」

やっぱり余裕の笑みで真二は言った。
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