恋の治療は腕の中で
「それで、私は何をすればいいんですか?」


「そうね。忘れてたわ。

わたくし達近々結婚式を挙げるのよ。

それで、是非悠文さんにお式に出席してもらいたいの。

でもいくら招待状を出しても悠文さんたら無視し続けてるのよ。」


そりゃそうでしょう。何しろ本人は、絶縁状態なんですから。


「それで、紗和さんに悠文さんがお式に出られるよう説得していただきたいの。」


「そんな、無理ですよ。お気持ちはわかりますけど。」


「それだけじゃないのよ。

お父様のことも誤解を解きたいのよ。」


誤解?

「悠文は、父は母親を愛していなかったと思いこんでるんだ。

だが、実際は違う。父が一番愛していたのはあいつの母親なんだ。」


「でも、隆文さんのお母様がいらしたのに……。」


「父は、悠文の母親と年の離れた幼なじみだったんだ。ずっと彼女を愛していたんだが親が反対して無理やり僕の母と結婚させられて、でも彼女の事を諦められなくて関係はずっと続いていて悠文が産まれたんだ。」


そうだったんだ。じゃあ、悠文は二人に愛されて産まれてきたのね。

良かった。


「それなら何故誤解を解かないんですか?」


「父は、今でも彼女が亡くなった事にショックを受けているんだ。悠文を見ると彼女を思い出して辛くなるからってわざと距離を置いてるくらいに。」

「分からないです。それなら尚更誤解を解けばいいのに。」


「父は、彼女が倒れた時側に居てやれなかったことをずっと後悔していて自分を責め続けてる。悠文にもすまないことをしたと思ってるんだ。

だから尚更自分から許してもらおうなんて出来る訳がない。」


悠文は、お母さんを愛していて。お父さんも奥さんを愛していてお互いに同じ人を愛していたのにわかりあえないなんてそんな可哀想なことってない。

そんなんじゃお母さんも浮かばれないよ。


「わかりました。説得できるか自信はないですけどやってみます。

それにはお二人の協力が必要かもしれません。

あっ、でも余り期待しないで下さいね。」


「ありがとう。

私達に出来ることがあったら何でも言ってちょうだい。

大丈夫よ。紗和さんならきっと悠文さんも話を聞いてくれると思うわ。」


< 145 / 163 >

この作品をシェア

pagetop